比較しない声かけ5選|「○○ちゃんはできるのに」を卒業して子どもの「今」を見つめる方法

比較しない声かけ5選|「○○ちゃんはできるのに」を卒業して子どもの「今」を見つめる方法

朝の連絡帳を読みながら、「○○ちゃんはもうこれができるんだ」と心の中でつぶやいた朝、ありませんか。

「比べちゃダメ」と頭ではわかっていても、気づくとわが子と他の子を心の中で並べてしまう。
そんな自分にちょっと罪悪感を抱く。
このスパイラルに、心当たりがある親御さんは多いと思います。

実は、わが子と他の子を比較してしまうのは、親の本能です。
比較された子どもが傷つくのも事実です。
この2つは両立します。
だからこそ、口に出す前のひと工夫が大切になります。

この記事では、モンテッソーリ教育の視点から「比較」を「観察」に切り替える5つの声かけを紹介します。
3歳から取り入れられるものです。気になったものを、ひとつだけでも今日から試してみてください。

先に、結論をひとつだけお伝えします。

「比べるのは、よその子じゃなく、昨日のその子」

これだけ覚えて帰っていただければ、この記事はおおむね伝わったことになります。

なぜ「○○ちゃんはできるのに」は逆効果なのか

5つの声かけに入る前に、「比較する声かけ」がなぜ逆効果なのか、3つの理由を整理します。

理由1:比較してしまう自分は「ダメな親」ではない

人気保育士のてぃ先生は、こう語っています。

「親は、無意識的に『子どもの足りないところを補おう』とするもの」

これは本能的な養育行動です。わが子を生かそうとする親であればあるほど、「足りなさ」を察知しようとします。
だから、他の子と並べて見てしまう。
これは、親であることのひとつの証でもあります。

公認心理師の佐藤めぐみさんも、「育児の青芝現象」という言葉でこの傾向を説明しています。
よその子の良い部分は、自然と目に留まる。
隣の芝生は、いつだって青く見えるのです。

ですので、まずは「比べてしまった自分」を責めないでください。
問題は、比べる気持ちそのものではなく、その気持ちを子どもにどう伝えるか、です。

理由2:比較された子どもに「愛情の不安」が芽生える

ただし、比較の言葉が子どもに直接届くと、これは別の問題になります。

保育者歴46年の柴田愛子先生は、子どもの心の中をこう代弁しています。

「子どもは常に『親に捨てられたくない』という危機感を持っている」

親が「あの子はちゃんとできてるのに」と口にした瞬間、子どもの中に「自分より、あの子がいいの?」という不安が芽生えます。
比較は、能力の話に見えて、実は愛情の話になってしまうのです。

これが続くと、子どもは「能力がないと愛されない」というメッセージを内面化します。
やがて、大人になっても他人と比べることでしか自分の価値を測れなくなる、という指摘もあります。

理由3:モンテッソーリの「観察」と「比較」は真逆

モンテッソーリ教育には、こんな原則があります。

「親は『観察』が基本。子どもの分析をしない。先入観を持たない」

「観察」と「比較」は、似ているようで真逆です。

比較は「他の何かと並べて、優劣を判断する」行為。
観察は「その子自身を、そのまま見つめる」行為。

マリア・モンテッソーリは、こんな言葉を残しています。

「もし子どもを必要以上に非難した場合、その子は批判することを学ぶでしょう。あなたが子どもを定期的にほめた場合、その子は尊重することを学ぶでしょう」

子どもは、大人が向ける眼差しを写し取って育ちます。
比較する眼で見つめられた子は、自分や他人を比較する人間になる。
観察する眼で見つめられた子は、自分や他人を尊重する人間になる。
シンプルですが、深い真理だと思います。

「比較しない」の声かけ集5選

きょうだい間の比較

❌ NGな声かけ:「お姉ちゃんは○歳でできたのに、どうしてあなたはできないの?」
⭕ OKな声かけ:「あなたはあなたのペースで進んでるね。先月できなかったことが、今日できるようになったね」

きょうだいは、同じ親から生まれていても「同じ」ではありません。性別・発達段階・気質はすべて違います。横並びで比較すること自体に、無理があるのです。

比べる対象を、お姉ちゃんではなく、先月のその子自身にしてみてください。比較を「縦の時間軸」に置き換えるだけで、声かけのトーンがぐっと優しくなります。

発達指標での焦り

❌ NGな声かけ:「もう○歳なのに、まだ○○できないの?」
⭕ OKな声かけ:「昨日できなかったことが、今日はちょっとできたね。明日はどんなことができるようになるか、楽しみだね」

発達には個人差があります。モンテッソーリ教育で言う「敏感期」の到来時期も、子どもによって違います。「もう○歳」という年齢の基準ではなく、「昨日と今日」の時間軸で見ること。

教育評論家の天野ひかり先生は、こう言います。

「他の子と比べて否定するより、過去の子どもと比べて、成長を認めよう」

「もう○歳」が「もう昨日より一歩進んだね」に変わるだけで、子どもの世界はぐっと明るくなります。

公園・園での横並びの瞬間

❌ NGな声かけ:「あの子はちゃんと座ってるのに、なんであなたはじっとしてられないの?」
⭕ OKな声かけ:「今、いっぱい動きたい時なんだね。動きたい気持ちを我慢するの、難しいよね」

その瞬間の子どもを観察することがポイントです。「あの子」と並べる代わりに、目の前の本人の気持ちに眼を向ける。「動きたい」と感じている子に、「あの子は座ってる」と返すのは、対話になっていません。

てぃ先生は、こう助言します。

「『どうやったらできるようになるのか』と前向きな問題解決志向で対応する」

「できない」ではなく「今、何を感じているのか」を見る。これがモンテッソーリ式の観察です。

連絡帳・面談後の不安をぶつけてしまう瞬間

❌ NGな声かけ:「先生に○○って言われたよ。みんなはちゃんとできてるのに」
⭕ OKな声かけ:「先生とあなたのお話をしてきたよ。あなたが大好きな○○のこと、先生に教えてあげたら、すごく喜んでた」

連絡帳や面談の後、親の中には「うちの子だけ遅れてる?」という不安が生まれがちです。でも、その不安をそのまま子どもに転嫁してはいけません。

子どもにとって、先生との会話は「比べられる装置」ではなく「自分を知ってもらう場」であってほしいのです。親自身の不安は、親の中で処理する。子どもには、肯定的なエピソードだけ持ち帰る。これは大人の役割です。

SNS・ママ友会話の後

❌ NGな声かけ:「○○ちゃんはもうあれができてるって。すごいなあ」
⭕ OKな声かけ:「今日、あなたが楽しそうにしてた○○、ママ・パパは大好きだよ」

てぃ先生いわく、「思ったとしても、口に出さない」ことが子どもの自尊心を守ります。

そして、親自身が比較から離れるための具体的なフィルターも紹介しておきます。

・比較対象をカット:「Aちゃんなし」で、わが子だけを見る練習
・「できる・できない」と「愛情」を分離:能力に関係なく、愛していることを言葉にする
・時間軸を広げる:「3年後も、この差で悩んでいるだろうか?」と問う

SNSやママ友会話の後ほど、このフィルターが効きます。

5つに共通する原則

5つの声かけには、共通する3つの原則があります。

原則1:横ではなく、縦の眼差しで見る(他の子ではなく、昨日のその子と比べる)
原則2:能力と愛情を分離する(できる/できないと、愛しているかどうかは別の話)
原則3:時間軸を広げる(3年後も気にしているか?で目の前の差を相対化する)

この3つを意識するだけで、比べそうになったときの逃げ道が増えていきます。

モンテッソーリ式の「比べない」を支える環境づくり

5つの声かけと並んで、もうひとつ大切なのが、子どもが「自分のペース」で取り組める環境を整えることです。

たとえば、こんな工夫があります。

・子ども専用の教具コーナー:年齢と発達段階に合った教具を、子どもの手の届く場所に
・「自分で選ぶ」余地を残す:今日の活動を子どもが選べるように、2〜3個の選択肢を用意する
・進捗ボード:できたことを子どもが自分で記録できる仕組み(シール表など)
・きょうだいで活動を分ける:同じテーブルで違う教具を扱う時間をつくる

すべてを揃える必要はありません。
気になったところから、ひとつだけ取り入れる、で充分です。

ポイントは、「他の子と比べやすい環境」から、「自分のペースで進める環境」へと家を整えていくこと。
子どもが自分で選んで、自分のペースで集中できる教具が手元にあると、親の視線も自然と「比較」から「観察」に切り替わっていきます。

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まとめ 5つのNG/OK声かけ一覧

シーン ❌ NG声かけ ⭕ OK声かけ
きょうだい間の比較 お姉ちゃんは○歳でできたのに あなたはあなたのペースで進んでるね
発達指標での焦り もう○歳なのに、まだできないの? 昨日できなかったことが、今日はちょっとできたね
公園・園での横並び あの子は座ってるのに 今、いっぱい動きたい時なんだね
連絡帳・面談後 みんなはちゃんとできてるのに 先生にあなたのこと教えたら、喜んでたよ
SNS・ママ友会話の後 ○○ちゃんはもうできてるって 今日のあなたの○○、ママは大好きだよ

「比べてしまう自分」を、まず許す

ここまで5つの声かけを紹介しましたが、最後にひとつだけ。

「比べてしまった日」があっても、自分を責めないでください。

NPO法人ハートフルコミュニケーションは、こう言います。

「比べる対象を他の子ではなく、過去の子どもにしてみるのです。
1年前のお子さんと比べてみてください」

これは子どもへの声かけの話に見えて、実は親自身への声かけでもあります。

「1年前の自分」と「今日の自分」を比べてみてください。
きっと、何かが進歩しています。比較に気づけるようになったこと自体が、すでに進歩です。

完璧な親はいません。「比べてしまった、ごめんね」と子どもに言える親が、いちばん素敵だと思います。

「比べるのは、よその子じゃなく、昨日のその子」

この一文を、できれば冷蔵庫の扉あたりに貼っておいてください。
ふと「○○ちゃんはできるのに」と口に出しそうになったら、冷蔵庫を開けたついでに、この一文を見つけてもらえたら嬉しいです。

子どもは、よその子と競争して大きくなるのではなく、昨日の自分を超えて大きくなります。
その伴走者として、私たち親は、横ではなく縦の眼差しを持ちたいですね。

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