失敗しても戻ってこられる子に育つ声かけ5選|「こぼさないでね」より大事なこと
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こぼさない飲み方。
忘れない仕組み。
けんかにならない座り方。
私たちはつい、崩れない方法を探します。
先回りして、失敗しないように整えます。
でも、こぼれます。
忘れます。
けんかになります。
先に結論をお伝えします。
崩れた日に効くのは、崩れないための工夫ではありません。
戻るための道が用意されているかどうかです。
この記事では、なぜ予防に寄せるとしんどくなるのかを整理した上で、失敗しても戻ってこられる子に育つ声かけを5つ、NGとOKの対比でご紹介します。
予防に寄せると、親が監視する役になります
崩れない前提で組んだものは、一度崩れると終わりになってしまいます。
完璧にやろうとするから、崩れた日に全部が終わってしまう。
これは子どもの話に見えて、実は親の話でもあります。
それに、予防のほうに寄せていくと、親の仕事が増えます。
こぼさないように見張っていなければいけない。
けんかにならないように間に立っていなければいけない。
気づくと、監視する役になっています。
一日中見張っているのは無理です。
無理なものを土台にすると、できなかった自分を責めることになります。
モンテッソーリの教具は、戻れるようにできています
ここで、教室の話を少しさせてください。
モンテッソーリの教室では、大人が子どもの間違いを直しません。
教具のほうに答えが仕込まれているからです。
円柱さしという教具は、順番を間違えると最後の1本が入りません。
大きさの違う立方体を積み重ねたピンクのタワーは、順番が違えば見た目で区別できます。
先生が指摘しなくても、物の方が教えてくれます。
この設計は、間違いに気づかせるためのものだと説明されることが多いのですが、言い方を変えたほうが正確だと思っています。
あれは、失敗しないための設計ではありません。
失敗しても戻れるための設計です。
教具は、間違ってもいいようにできています。
間違えた状態が目に見えて、そこから自分で戻せる。
間違いが起きない作りにはなっていません。
もし間違いようのない教具を作ったら、子どもは何も学ばないでしょう。
そう考えると、モンテッソーリの教室は、失敗を減らす場所ではありません。
失敗から立ち直る回数をたくさん持てる場所です。
同じ仕掛けは、家の中にもあります。
こぼれた水は、こぼれた形のまま見えています。
散らかった床も、やりっぱなしの靴も、全部が目に見えている。
誰かが言葉で指摘しなくても、その状態そのものが残っています。
足りないのは、気づかせる言葉の方ではありません。
戻る道具が置いてあるかどうかは、環境の話です
分かりやすい例が、教室での水の扱い方です。
子どもが水を注ぐとき、最初からコップいっぱいに注ぐことはありません。
ひと口分だけ入れて渡します。
そして、拭くための布を、子どもの手が届くところに置いておきます *1。
その布も、大人用の雑巾ではありません。
子どもの手に合う大きさのものを用意します *2。
つまり、こぼすことが最初から織り込まれています。
こぼさないように見張るのではなく、こぼれたときに自分で戻せるように、一続きの用意にしてある。
ここで大事なのは、道具の置き場所です。
ほうきやちりとりは、たいていは大人の背の高さに合わせて片づけられています。
子どもの手が届かない場所に戻す道具があると、戻すのは大人の仕事になります。
子どもから見れば、自分がこぼしたものを自分で片づける方法が、この家には存在しないということです。
戻る道が通っていないのに、「戻りなさい」と言っても難しい話です。
失敗しても戻ってこられる子に育つ声かけ5選
こぼす前提で、拭くものを先に置く
NG:「こぼさないようにね」と言ってから渡す
OK:布を置いてから渡す
言葉で予防するより、物を置くほうが速いです。
また、拭くものがそばにあると、親のほうも慌てなくなります。
慌てないので、叱らずに済みます。
やってみると分かりますが、変わるのは子どもの行動よりもこちらの反応です。
布が目に入っているだけで、こぼれた瞬間の一言が変わります。
失敗した瞬間に出す言葉を、先に決めておく
NG:「だから言ったでしょう」
OK:「どうする」
とっさの一言は、考えて選べません。
だから先に決めておきます。
「どうする」は、責めてもいないし、答えも渡していません。
戻る手順に入る合図としてだけ働きます。
決めておくと、口が勝手にそちらを言うようになります。
最初の何回かは、言った後で自分でも驚くと思います。
子どものほうも、この一言で身構えることがなくなります。
叱られる前触れではないと分かるからです。
戻し方は、失敗していないときに教える
NG:割れてから「気をつけなさい」と言う
OK:何も起きていない日に、ほうきの使い方を一緒にやっておく
失敗した直後は、子どもも大人も動揺しています。
その状態で新しい手順を教えても、入りません。
戻り方の練習は、平常時にやるものです。
避難訓練と同じで、火事や地震が起きてから経路を説明する人はいません。
平常時にやっておくことで、いざというときに子どもが勝手に動きます。
教えられた記憶ではなく、やったことのある体のほうが先に動くからです。
親が「完璧にやろう」をやめる
NG:毎日やると決めたことが、3日目に崩れてやめる
OK:崩れる日がある前提で組んでおく
これは子どもではなく、親側の話です。
毎日の読み聞かせでも、声かけの工夫でも同じで、完璧にやろうとした人ほど、一度できなかった日にそのまま離れていきます。
週に何回かでいいと最初から決めておく。
そうすると、できなかった日が失敗ではなくなります。
戻れる形にしておくのは、子どものためだけではありません。
続けられる形にしておかないと、そもそも届けるものが途切れてしまいます。
親が失敗して、戻るところを見せる
NG:自分の失敗はこっそり処理する
OK:こぼしたら、黙って拭くところまで見せる
子どもは、教えられたことよりも、見たことを取り込みます。
そうであれば、見せるべきなのは失敗しない姿ではありません。
失敗しても、騒がず、戻るところです。
大人が自分の失敗を隠していると、子どもは失敗を隠すべきものだと覚えます。
これは、かなり長く残ります。
5つの中で一番効くのはこれだと思います。
そして、一番実行するのが大変だとも感じています。
自分の失敗を見られるのは、誰にとっても気まずいからです。
5つに共通する原則
原則1:言葉で予防せず、物を置く。布が1枚あるだけで一言が変わります。
原則2:とっさの言葉は先に決める。その場では選べません。
原則3:戻り方は平常時に教える。動揺しているときには入りません。
原則4:崩れる日がある前提で組む。完璧は、一度崩れると終わります。
原則5:戻る姿を見せる。隠すと、隠すことのほうが伝わります。
「戻れる」を練習できる環境づくり
ここまでお読みになって、家の中を見回したくなった方もいるかもしれません。
拭く布の位置。
ほうきの高さ。
子どもの手が届く範囲に、戻すための道具があるかどうか。
そこを変えるのが、一番確実です。
そしてもう一つ、おもちゃの選び方にも同じ考え方が使えます。
おもちゃには、間違いようのないものと、間違えられるものがあります。
ボタンを押せば必ず音が鳴るものは、失敗が起きません。
失敗が起きないので、戻る練習にもなりません。
一方で、円柱さしのように、順番が違えば最後に入らない作りのものは、子どもが自分で気づいて自分でやり直せます。
大人が採点する必要がありません。
モンテッソーリが教具にこの仕組みを組み込んだのは、子どもが大人からの評価なしに前へ進めるようにするためでした。
そのために重要なのが、年齢と発達段階に合った教具や知育玩具を家庭に取り入れること。
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まとめ 5つのNG/OK
水やお茶を渡すとき
❌ NG:「こぼさないようにね」と言ってから渡す
⭕ OK:布を置いてから渡す
失敗した瞬間
❌ NG:「だから言ったでしょう」
⭕ OK:「どうする」
戻し方を教えるとき
❌ NG:割れてから「気をつけなさい」と言う
⭕ OK:何も起きていない日に、ほうきの使い方を一緒にやっておく
習慣が続かないとき
❌ NG:毎日やると決めて、3日目に崩れてやめる
⭕ OK:週に何回かでいい、と最初から決めておく
自分が失敗したとき
❌ NG:こっそり処理する
⭕ OK:こぼしたら、黙って拭くところまで見せる
数えるものを変えてみる
失敗しない子に育てることと、失敗した後に戻れる子に育てることは、別のことです。
前者は、いつか必ず破綻します。
後者は、うまくいかなかった後に機能します。
戻し方を渡すのでもなく、黙って見ているのでもなく、隣で一緒に考える。
数えるものを変えてもいいのかもしれません。
今日は何回こぼさなかったか、ではなく、今日は何回自分で戻れたか。
今日こぼれたものがあったら、それは練習の機会が一回来たということです。
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引用元・参考
*1 brother「モンテッソーリのおもちゃは手作りできる。おうちモンテ基本の考え方を解説」(こぼすことを自然なこととして見守る/ひと口分だけ入れて渡す/拭く布を手の届く場所に置く) https://sewing-oasis.brother.co.jp/article/detail?aid=172
*2 モンテッソーリ保育のタネ「【日常生活の練習④】おしごとを用意する時のポイント」(子どもの手や背丈に合うサイズ/子どもサイズの台拭きを用意する) https://montessori-hoikunotane.com/lifepractice_4/