登園しぶりの声かけ5選|「いきたくない」の朝を親子で乗り越えるモンテッソーリ式の受け止め方
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「ようちえん、いきたくない」
玄関でそう言われると、こちらまで泣きたくなりますよね。
さっきまで機嫌よく朝ごはんを食べていたのに、急に靴を履かなくなった。
抱きついて離れない。
あんなに楽しそうに通っていたのに、どうして。
登園しぶりは、多くのおうちで起きています。
3〜5歳の子を持つ親への調査では、登園しぶりを経験した親は8割 *1。
長期休みや連休の明けに限った調査でも、約4割の親が経験しています *2。
うちだけじゃないのか、とまず思っていただいて大丈夫です。
この記事では、登園しぶりが「わがまま」でも「甘やかしの結果」でもないこと、むしろお子さんの心がちゃんと育っている証拠であることを、モンテッソーリ教育と発達心理学の両方からお伝えします。
そのうえで、明日の朝から使える声かけを5つ、休ませるかどうかの線引き、そして長引いたときの相談先まで、ひととおり整理しました。
子どもにとって「いつもと同じ」は、世界を理解する足場
モンテッソーリ教育には「秩序の敏感期」という考え方があります。
幼い子どもは、いつもと同じ順番、いつもと同じ場所、いつもと同じ流れに、大人が想像する以上に強い感受性を持っています。
教師養成機関の公式解説には、「いつもと違う道を行こうとすると大泣きする」という例が挙げられているほどです *3。
マリア・モンテッソーリは、この時期の感受性についてこう書いています *4。
「これらの時期は、発達途上の子どもに現れる特別な感受性である。それは一過性で、ある特定の性質を獲得するためのものだ」
子どもは「いつもと同じ」を足場にして、世界を理解していきます。
だからこそ、長い休みや続いた体調不良、家庭の予定で園を離れた期間は、子どもにとって「世界の秩序」が丸ごと入れ替わった時間になります。
子どもはその新しい秩序に、時間をかけてようやく慣れたところです。
そこへ「明日から園だよ」と言われる。
つまり登園しぶりは、二度目の秩序の組み替えを求められた子どもの自然な抵抗なのです。
反抗でも退行でもなく、順応の途中の姿です。
月曜の朝だけしぶるという子も同じ理屈で説明がつきます。
土日の二日間で、子どもの中の「いつも」が少し書き換わっているのです。
泣いてしがみつくのは、愛着が育った証拠です
もうひとつ、安心材料をお渡しします。
親と離れるときに泣く「分離不安」は、発達の過程で誰にでも現れる正常な反応です。
小児科医監修の解説では、分離不安は愛着がしっかり芽生えた証拠とされています *5。
米国小児科学会も、分離不安を「意味のある愛着が育っている美しいサイン」と説明しています *6。
発達心理学者のエインスワースは、このようなことを示しました。
子どもは、安心して戻れる「安全基地」があるからこそ、外の世界へ探索に出ていける *7。
玄関であなたにしがみつくのは、あなたが安全基地として機能している証拠です。
そして安全基地があるからこそ、子どもはまた、外へ出ていけるようになります。
モンテッソーリ式 登園しぶりの声かけ5選
前置きが長くなりました。
明日の朝から使える5つです。
まず受け止める「いきたくないんだね」
説得する前に、まず受け止めます。
現役保育士の実践でも、最初の一言は「そっか、行きたくないんだね」と気持ちを認めることが勧められています *8。
「大丈夫だよ」「楽しいよ」と励ますのは、受け止めの後で。
順番が逆になると、子どもは「わかってもらえていない」と感じて、余計にかたくなになります。
たった一言分遅らせるだけで、その後の五分が変わります。
見通しを渡す「短い針がここに来たら、迎えに行くね」
幼い子の不安の正体は、見通しが持てないことです。
時計の針の位置で、お迎えの時刻を目に見える形にする *9。
「必ず迎えに来る」が具体的な形になった瞬間、不安はぐっと小さくなります。
そして、この約束だけは必ず守ってください。
守れない約束やウソ(「ちょっと見に行くだけだよ」)は、次の日の不安を大きくします。
送り出しは、笑顔であっさりと
名残惜しそうに何度も振り返ると、子どもは「やっぱり不安な場所なんだ」と受け取ります。
モンテッソーリ教師の助言でも、預けたら早めにその場を離れることが勧められています *10。
園の実践では「出発前にぎゅっと抱きしめる時間を先に取り、予告してから送り出す」という形も紹介されています *11。
充電してから、あっさりと。これが基本形です。
冷たいのではなく、あなたが落ち着いていることが、子どもにとっていちばんの安心材料になります。
帰ってきたら、根掘り葉掘り聞かない
「今日どうだった。泣かなかった。誰と遊んだの」
心配のあまり質問攻めにすると、子どもは園を「親が心配する場所」として記憶してしまいます *10。
聞き出すより、帰宅後の甘えやぐずりをゆったり受け止めるほうが、ずっと回復を助けます。
話したくなったら、子どもは自分から話します。
朝を「できた」で始める
ここがモンテッソーリの出番です。
しぶる朝は、親もつい「早くして」を連発してしまいます。
そこで、前の晩に環境のほうを整えておく。
服は2択にして、自分で選べる棚にしまっておく。
持ち物は一か所に。
朝の流れは「ごはん、はみがき、おきがえ」と見通せる形に *12。
朝いちばんの「じぶんでできた」は、小さな成功体験です。
「できた」で始まった朝は、玄関の足取りが変わります。
5つに共通する原則
原則1:説得より先に、受け止める。子どもは理解されてから動きます。
原則2:見えない不安を、見える形にする。時計、カレンダー、順番の絵。
原則3:別れ際は短く、笑顔で。親の落ち着きが子どもの安心になります。
原則4:帰宅後は聞き出さず、受け止める。回復の場所は家です。
原則5:朝を成功体験から始める。整えるのは子どもではなく環境です。
生活リズムは、数日前から少しずつ
日本の4〜6歳児654人の調査では、休みの日に睡眠リズムが大きくずれる子ほど、イライラや友達関係のトラブルが多いことが報告されています *13。
長い休みや連休は、このズレが最も大きくなる期間です。
立て直しの基本は、朝の光と朝ごはん *14。
登園再開の数日前から、起きる時間を少しずつ戻していく。
初日に全部戻そうとしなくて大丈夫です。
「休ませてもいい」問題の線引き
しぶりが強い朝、休ませるべきか、連れて行くべきか。
小児科医の鶴丸靖子医師は、子どもが「おなかが痛い」と言うときは、たとえ心因性でも本当に痛いのだと受け止めることを勧めています *15。
そのうえで面白いのが「お休みシール」という提案です。休んでいい日を、前もってカレンダーで親子で決めておく。当日の駆け引きにしない。
休ませることは、甘やかしではありません。
ただ、場当たりにしないこと。
この線引きだけで、親も子も、ずっと楽になります。
しぶりが長引いたときは
大切な線引きをひとつ。
泣いて登園しても、園に着けば遊べる。
帰りは笑顔。
それなら、時間が解決してくれる通常の登園しぶりです。
一方で、腹痛や頭痛などの体の症状が続く、食欲や睡眠が変わってきた、強い不安が数週間単位で続いて生活に支障が出ている。
そんなときは、ひとりで抱えず、園の先生とかかりつけの小児科に相談してください *5。
国も、長期休業の明けは子どもの心が揺れやすい時期として、毎年「小さなサインを見逃さないで」と大人たちに呼びかけています *16。
相談できる窓口もあります。
24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310):24時間365日・無料。子どもも保護者も相談できます *17
児童相談所相談専用ダイヤル(0120-189-783):虐待に限らず、子育ての悩み全般を相談できます *17
よりそいホットライン(0120-279-338):親自身のしんどさを、24時間聞いてもらえます *17
「園に行けているかどうか」より、「お子さんとあなたが追い詰められていないか」のほうが、ずっと大事です。
声かけを支える「環境づくり」
ここまで声かけを中心にお伝えしてきましたが、もうひとつ大切な視点があります。
それは、子どもが自分から動ける環境を整えることです。
しぶる朝に効くのは、朝そのものへの働きかけよりも、前の晩の準備でした。
服を2択にする、持ち物を一か所にまとめる、順番を目に見える形にする。
どれも「子どもをがんばらせる」のではなく「環境の側を変える」やり方です。
同じ考え方は、園から帰ってきた後の時間にも使えます。
しぶりが続いている時期の子どもは、家で静かに集中できる時間を持てると、驚くほど落ち着きを取り戻します。
手を動かして「じぶんでできた」を積み直せる遊びが、その受け皿になります。
そのために重要なのが、年齢と発達段階に合った教具・知育玩具を家庭に取り入れること。
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まとめ 5つのNG/OK声かけ
朝、しぶりが始まったとき
❌ NG声かけ:「行けばきっと楽しいよ、大丈夫だから」
⭕ OK声かけ:「そっか、いきたくないんだね」
不安が強くて離れられないとき
❌ NG声かけ:「すぐ迎えに来るから」
⭕ OK声かけ:「短い針がここに来たら、迎えに行くね」
別れ際
❌ NG声かけ:「ほんとに大丈夫。ママ行っちゃうよ。いい」
⭕ OK声かけ:「ぎゅーってしたら、いってきます」
帰宅後
❌ NG声かけ:「今日どうだった。泣かなかった」
⭕ OK声かけ:「おかえり。ゆっくりしよう」
朝の支度
❌ NG声かけ:「早くして、遅れちゃう」
⭕ OK声かけ:「どっちの服にする」
「行きたくない」と言えた朝は
「行きたくない」を誰にも言えないまま大きくなる子どもも、この世界にはいます。
教育職として長く子どもと向き合ってきて、私はそのことを何度も見てきました。
だから、断言できます。
玄関で「いきたくない」と泣くこと。
それを受け止めてくれる大人が目の前にいること。
それ自体が、どれほど恵まれた育ちの風景か。
しぶりの朝は、親にとってはしんどい朝です。
でもその朝、お子さんは安全基地に向かって、ちゃんとSOSを出せています。
あなたはそれを、ちゃんと受け止めています。
泣いたけど、行けた。
行けなかったけど、話せた。
どちらの朝も「できたこと」です。
しんどい数日を、どうかそんなふうに数えてあげてください。
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引用元
*1 講談社コクリコラボ調査(2022年・3〜5歳児の親105人・登園拒否/行きしぶり経験80%) https://cocreco.kodansha.co.jp/cocreco/general/life/labo/0vWs3
*2 いこーよ総研ユーザーアンケート(2024年・N=402・長期休み明けの行きしぶり経験約4割) https://research.iko-yo.net/solutions/research/11259.html
*3 日本モンテッソーリ教育綜合研究所「モンテッソーリ教育について」(敏感期・「いつもと違う道で大泣き」) https://sainou.or.jp/montessori/about-montessori/thought.html
*4 マリア・モンテッソーリ『The Secret of Childhood(幼児の秘密)』第3章(敏感期の定義。訳は筆者)。archive.org 原著全文 https://archive.org/details/secretofchildhoo0000mont
*5 小児科医・藤井明子氏監修「分離不安とは」(LITALICO発達ナビ) https://h-navi.jp/column/article/35026368
*6 米国小児科学会(AAP)healthychildren.org「分離不安への向き合い方」 https://www.healthychildren.org/English/ages-stages/toddler/Pages/Soothing-Your-Childs-Separation-Anxiety.aspx
*7 Bretherton, I. (1992)『The Origins of Attachment Theory』Developmental Psychology 28(5) https://psychology.psy.sunysb.edu/attachment/online/inge_origins%20DP1992.pdf
*8 てぃ先生(現役保育士)「行きしぶりへの対応」(未来へいこーよ) https://future.iko-yo.net/tips/16494/
*9 LITALICOジュニア「登園しぶり・行きしぶりコラム」 https://junior.litalico.jp/column/article/167/
*10 モンテッソーリ教師あきえ氏監修「登園しぶり」(HugKum・小学館) https://hugkum.sho.jp/399910
*11 モンテッソーリ久が原子どもの家「別れ際の3ステップ」 https://note.com/monte_kugahara/n/n2398589ed369
*12 モンテッソーリ教師あきえ氏「朝の支度がスムーズになる環境づくり」(モンテッソーリペアレンツジャーナル) https://montessoriparents.jp/blog/make-childrens-morning-preparations-smoother/
*13 Doi, Y. et al. (2015)『Associations of chronotype with social jetlag and behavioral problems in preschool children』Chronobiology International 32(8) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26317786/
*14 文部科学省「早寝早起き朝ごはん」資料 https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/08060902/003.pdf
*15 小児科医・鶴丸靖子氏監修「連休明けの行きしぶりと心身のサイン」(学研こそだてまっぷ) https://kosodatemap.gakken.jp/life/health/102923/
*16 文部科学大臣メッセージ(毎年8月・長期休業明けの子どもの見守り呼びかけ) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/mext_00003.html
*17 相談窓口(いずれも2026年7月に一次サイトで確認):24時間子供SOSダイヤル(文部科学省) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1306988.htm /児童相談所相談専用ダイヤル(こども家庭庁) https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial /よりそいホットライン(社会的包摂サポートセンター) https://www.since2011.net/yorisoi/