遊び食べと立ち歩きが減る声かけ5選|食べさせるより「食べられる環境」をつくる
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夕飯の時間が、一日のうちで一番つらい。
スプーンを持たせても握って離さない。
立ち上がって走り出す。
やっと座ったと思ったら、米粒を一粒ずつ床に落としはじめる。
こちらは明日の支度も残っていて、時計だけが進んでいく。
そう感じている方は、決して珍しくありません。
厚生労働省の調査では、子どもの食事について困りごとを抱えている保護者が約8割にのぼります *1。
先に結論をお伝えします。
この場面で先に見てほしいのは、言葉ではありません。
子どもの足元です。
この記事では、困りごとが年齢で入れ替わることを調査から確かめた上で、今夜から試せる5つを、NGとOKの対比でお伝えします。
困りごとは年齢で入れ替わる
同じ調査で、興味深い点があります。
困りごとの中身が、年齢によって入れ替わるのです *1。
2歳から3歳になるまでの時期は、「遊び食べをする」が最も多く、41.8パーセントでした。
スプーンで皿を叩く、ごはんを握りつぶす、椅子から降りて走り出す。
あの時期です。
ところが、3歳を過ぎると、最も多い困りごとが変わります。
「食べるのに時間がかかる」ことです。
3歳から4歳で32.4パーセント、4歳から5歳で37.3パーセント、5歳以上で34.6パーセント。
遊び食べが1位の座から降りている、ということです。
2歳のころ「座って食べなさい」と言っていた親が、4歳になると「早く食べなさい」と言っている。
困りごとが解決したというより、入れ替わったほうが近いと思います。
これは、遊び食べがなくなったという意味ではありません。
ただ、「うちの子はずっとこのままなのだろうか」という心配に対しては、一つの答えになります。
今一番困っていることは、たぶんその年齢特有の悩みです。
次の年齢になると、次の困りごとが起こります。
身も蓋もない話ですが、同じ場所で苦しみ続けるわけではないと分かるだけで、少し楽になります。
声をかける前に足元をチェック
食事の悩みというと、どう言えば食べるかという話になりがちです。
ただ、言葉を変える前に見てほしい場所があります。
子どもの足です。
椅子に座ったとき、足の裏が床か足台についているでしょうか。
宙に浮いていないでしょうか。
大人用の椅子に子どもを座らせると、たいてい足はぶらぶらしています。
あの状態は、カウンターの高い丸椅子に座って定食を食べているのと同じです。
背もたれもなく、足も届かない。
大人でも、5分で座り直したくなります。
子どもが体をねじったり、片膝を立てたり、椅子の上に立ち上がったりするのは、落ち着く場所を探しているからかもしれません。
足の裏がどこかに着くと、体が安定して、噛む力が入りやすくなります *2。
逆に浮いていると、体を支えるほうに力を使うので、食べることに向ける分が減ります。
理想は、椅子に座ったときに膝が90度、机に肘を置いたときに肘が90度になる高さです *2。
足台は、買わなくても作れます。
牛乳パックに新聞紙を詰めてガムテープで束ねたもの。
使っていない雑誌を重ねて紐でしばったもの。
高さが合えば何でもかまいません。
今夜の夕飯から試せます。
立ち歩く子の何割かは、しつけの前に、座り心地の問題かもしれません。
食卓が変わる声かけ5選
足が床につくようにする
NG:「ちゃんと座りなさい」と言う
OK:足台を置く
言葉で姿勢を直すより、足の下に物を置くほうが速いです。
高さが合っているかどうかは、横から見ると分かります。
膝が90度になっているか。
かかとが浮いていないか。
これは一度やれば終わる工夫なので、5つの中で一番手間がかかりません。
毎晩「座りなさい」と10回言っていたのが、足台を置いた日から3回になる。
そういう変わり方をします。
言葉を減らせる分、こちらの消耗も減ります。
最初に盛る量を減らして、おかわり制にする
NG:食べてほしい量を最初に全部盛る
OK:少なめに盛って「おかわりする?」と聞く
皿の上に山があると、子どもは食べ始める前に「終わらない」と感じます。
大人でも、大盛りが出てくると箸が止まります。
少なく盛れば、食べ終わります。
食べ終わったら、おかわりができます。
同じ量を食べたとしても、「食べきれなかった」で終わる日と、「おかわりした」で終わる日があるということです。
実際に口に入った量は変わりません。
変わるのは、その食事がどちらの記憶になるかです。
モンテッソーリ教育では、量を自分で決める経験を大事にします。
おかわりを聞くという形なら、家でもそのまま渡せます。
「あと一口」を言わない
NG:「あと一口だけ食べて」
OK:「ごちそうさまにする?」
あと一口は、たいてい一口では終わりません。
一口食べたら、もう一口と言いたくなります。
子どもの側から見ると、これは自分で終わりを決められないということです。
終わりが見えない食事は、座っていられなくなります。
やめどきを本人に返すと、かえって自分から「もう少し食べる」と言うことがあります。
追いかけられている間は逃げたくなり、追いかけるのをやめると寄ってくる。
食卓でも、同じことが起きます。
遊び始めたら、声をかけずに切り上げる
NG:「遊ばないの。ちゃんと食べなさい」と言い続ける
OK:黙って片づけを始める
遊び食べが始まった時点で、その子はもうお腹が空いていないことが多いです。
空腹は、食事の最も強い動機です。
それがなくなった後で言葉を足しても、効きません。
叱りながら30分座らせるより、そこで終わりにして、次の食事までお腹を空かせたほうが早いです。
ただし、これは「食べないなら片づけるよ」と脅す形にはしないでください。
黙って片づけるだけです。
脅しにすると、子どもは「どこまで遊んだら片づけられるか」を測りはじめます。
そうなると、食卓が毎晩の交渉の場になります。
下げるところまでを、子どもの仕事にする
NG:食べ終わったら、親が全部片づける
OK:自分の皿を流しまで運ぶ
モンテッソーリ教育には、日常生活の練習という考え方があります。
運ぶ、注ぐ、拭く。
生活そのものが子どもの仕事になります。
食事も、食べるところで終わりではありません。
運んで、食べて、下げるまでが一続きです。
割れない皿を使えば、2歳でも運べます。
最初はこぼします。
こぼす前提で、拭くものを近くに置いておくところまでが用意です。
そして、自分で下げた子は、次の食事に自分から座ることがあります。
自分の持ち場がある場所には、戻りやすいからです。
食べさせてもらうだけの席と、自分の仕事がある席とでは、座る気持ちが違います。
5つに共通する原則
原則1:言葉の前に、体の条件を整える。足が浮いていては座れません。
原則2:終わりを本人に返す。追いかけるほど逃げられます。
原則3:空腹が切れた後に言葉を足さない。効きません。
原則4:脅しの形にしない。食卓が交渉の場になります。
原則5:席に仕事を置く。持ち場がある場所には戻ってきます。
食卓の「自分の仕事」を支える環境づくり
5つの中で、一番長く効くのは最後の一つです。
運んで、食べて、下げる。
この一続きが回り始めると、食事は「させるもの」ではなくなります。
ただ、いきなり食卓で任せるのは、少し難しいこともあります。
皿を落とさずに運ぶには、両手で持つ力が必要です。
注ぐには、傾ける角度を自分で加減する力が要ります。
これらは、遊びの中で育ちます。
手を使って、自分のペースで最後までやりきる。
大人が途中で手を出さなくても、うまくいかなければ自分でやり直せる。
そういう遊びを重ねた子は、食卓でも自分の仕事を引き受けられるようになります。
そのために重要なのが、年齢と発達段階に合った教具や知育玩具を家庭に取り入れること。
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まとめ 5つのNG/OK
座っていられないとき
❌ NG:「ちゃんと座りなさい」と言う
⭕ OK:足台を置く
盛りつけるとき
❌ NG:食べてほしい量を最初に全部盛る
⭕ OK:少なめに盛って「おかわりする?」と聞く
もう少し食べてほしいとき
❌ NG:「あと一口だけ食べて」
⭕ OK:「ごちそうさまにする?」
遊び食べが始まったとき
❌ NG:「遊ばないの。ちゃんと食べなさい」と言い続ける
⭕ OK:黙って片づけを始める
食べ終わった後
❌ NG:親が全部片づける
⭕ OK:自分の皿を流しまで運ぶ
明日ためすのは、足台一つでかまいません
食べさせることと、食べられる状態をつくることは、別のことです。
前者は、毎食、力が要ります。
後者は、一度やれば翌日も効きます。
足台を置く。
盛る量を減らす。
終わりを本人に返す。
どれも、子どもを変えようとしていません。
変えているのは、椅子の高さと、皿の中身と、言葉のかけ方だけです。
ここで冒頭の数字をもう一度。
困っている保護者は約8割です。
今日うまくいかなかったとしても、同じ時間に同じように苦戦している食卓が、全国にいくつもあります。
明日ためすのは、足台一つでかまいません。
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引用元・参考
*1 厚生労働省「平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要」(子どもの食事で困っていること。約8割の保護者に困りごとあり/2〜3歳未満は「遊び食べをする」41.8パーセントが最多/3〜4歳32.4パーセント、4〜5歳37.3パーセント、5歳以上34.6パーセントで「食べるのに時間がかかる」が最多) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000134208.html
*2 HugKum(小学館)「【子どもの食事のお悩み解決】姿勢は正しいですか。食事の時に大切なのは「お子さんの椅子」が合っていること」(足の裏が床や足台につくと体が安定する/膝90度・肘90度が目安) https://hugkum.sho.jp/585724