順番を一つ飛ばすと泣く理由|登園の朝を変えたのは声かけではなく段取り

順番を一つ飛ばすと泣く理由|登園の朝を変えたのは声かけではなく段取り

毎朝、保育園の門の前で泣く。

抱っこでなだめる。

好きなキャラクターの話をする。

「先生が待ってるよ」と言ってみる。

どれも、その場しのぎにしかならない。

出社の時間は迫ります。

後ろには、同じように急いでいる保護者が並んでいます。

泣き声が大きくなるほど早く終わらせたくなって、結局抱えて教室に押し込む。

そんな朝を過ごしているご家庭は、決して少なくありません。

 

先に結論をお伝えします。

この場面で効くのは、声かけではありません。

段取りのほうです。

この記事では、朝の順番を4つ決めただけで門の前の涙が止まったご家庭の話を紹介し、なぜそれが効くのかをモンテッソーリ教育の「秩序の敏感期」から解説します。

その上で、今日から決められる順番の作り方を4つお伝えします。

決めたのは、たった4つの順番でした

2歳の息子さんを育てているお父さんが、ある日、声をかけるのをやめました。

代わりに変えたのは、朝の段取りです。

決めたのは、これだけでした。

車を降りる前に、持ってきたおもちゃに「またあとでね」と言う。

受付の手続きをする。

自分の靴を下駄箱にしまう。

玄関にいる金魚に「おはよう」と言う。

この4つを、毎朝、同じ順番でやる。

数日続けたころから、息子さんは泣かずに部屋へ入るようになりました。

 

その中で、もう一つ分かったことがあります。

どれか一つを飛ばした日は、やっぱり泣くのです。

急いでいて金魚を飛ばした朝。

受付が混んでいて、先に靴をしまった朝。

順番が入れ替わっただけで、元に戻ってしまいました。

興味深いのは、息子さんが「金魚を見ていない」と言っているわけではない、ということです。

ただ泣く。

本人にも、何が足りないのかは言葉にできていません。

このお父さんは、その時点ではモンテッソーリ教育のことを知りませんでした。

毎朝の様子を見ていて、気づいただけです。

それは「秩序の敏感期」と呼ばれるもの

マリア・モンテッソーリは、幼い子どもには秩序に対する強い感受性がある時期があると述べています。

それは、物そのものではなく、物と物との関係を感じ取る力だとされています。

どこに何があるか。

何の次に何が来るか。

いつも父親が座る席に母親が座ると泣く。

靴をそろえる場所が1足分ずれていると、直しにいく。

絵本を読む前に電気を消す順番が違うと、最初からやり直させる。

大人から見れば、どうでもいい違いです。

ただし、その子にとっては、世界の形が変わったことになります。

 

『幼児の秘密』の中に、こんな一節があります *1。

この感受性は、子どもがぶつかる障害のほうによく表れている。

子どもの癇癪の多くは、この感受性から来ているのかもしれない。

「癇癪の多くは」と書かれています。

つまり、泣いている子は、わがままを言っているのではなく、順番が崩れたことに抗議している場合がある。

そう読み取れます。

同じことをしていたご家庭が、他にもありました

興味深いことに、まったく違う場面で、同じ形のことをしている方が何人もいます。

寝かしつけを変えたケース

抱っこで寝かせていたお母さんの話です。

腕の中で寝たのを確認して、そっと布団に下ろす。

下ろした瞬間に起きる。

これを毎晩くり返していました。

ある日、やり方を変えました。

部屋を完全に暗くして、同じ音を一定の音量で流し、抱っこをやめて、そばに座って待つ。

初日は2時間半かかったそうです。

それでも抱き上げませんでした。

翌日から、自分で寝るようになりました。

変えたのは、寝かしつけの技術ではありません。

部屋の暗さと、音と、大人の居場所です。

どれも、子どもに何かを要求していません。

買い物を変えたケース

スーパーでぐずられるのが毎回つらかった、というお母さんの話です。

変えたのは、店に入る前でした。

今日買うものを子どもに見える形で示して、「これはあなたの担当ね」と役割を渡してから入る。

そしてもう一つ決めたことがあります。

それでもぐずったら、店内で説得せず、いったん外に出る。

店の中で言い聞かせるのをやめた、ということです。

外に出ると、30秒ほどで落ち着くそうです。

店内では、照明も音も人も多すぎて、どんな言葉も届かなかったのだと思います。

帰り道を変えたケース

保育園からの帰り道でぐずられるのに困っていたというお父さんの話です。

ある日、なんとなく、少し遠回りして帰ってみたそうです。

それだけで機嫌が直りました。

以来、その道が定番になっています。

最初は、自分が面倒だと思っていた遠回りでした。

それが今は、1日のうちで一番落ち着いて話せる時間になっているそうです。

寝る前の会話を変えたケース

きょうだいに順番を決めて話をさせていたのをやめたお母さんの話です。

代わりに、「お話のある人」と合図だけ出すことにしました。

話したい子から、自然に話し始めるようになったそうです。

順番を決めていたころは、話すことがない日でも何か言わなければならず、それが重荷になっていたのかもしれません。

合図だけにしたら、黙っている日があってもよくなりました。

子どもを説得しない

5つのご家庭に共通していることがあります。

誰一人として、子どもを変えようとしていません。

泣かないように言い聞かせた人はいません。

我慢の仕方を教えた人もいません。

言い聞かせが効かないのには、理由があります。

泣いている最中の子どもは、言葉を受け取れる状態ではありません。

そこに言葉を足すのは、音が鳴っている部屋の中で、もう一つ音を増やすようなものです。

変えたのは、順番であり、部屋の明るさであり、店に入る前の段取りであり、帰る道であり、話し始める合図でした。

どれも、子どもの外側にあるものです。

モンテッソーリ教育で「環境を整える」という言い方をするとき、多くの方は棚の高さや教具のことを思い浮かべます。

それも環境ですが、それだけではありません。

毎朝の4つの順番も環境の一部です。

帰り道も環境です。

そして外側のものは、子どもの気持ちと違って、大人が今日から変えられます。

今日から決められる、順番の作り方4つ

3つか4つに絞る

朝でも夜でもかまいません。

全部を決めようとすると、必ず続きません。

冒頭のご家庭も、決めたのは4つだけでした。

夜なら、お風呂から出る、パジャマを着る、歯を磨く、絵本を1冊読む。

これくらいの粒度で十分です。

内容より、毎日変わらないことを優先する

何をするかは、実のところ何でもかまいません。

大事なのは、毎日同じであることの方です。

子どもが足場にしているのは、中身ではなく順序だからです。

立派な習慣を作ろうとしなくて大丈夫です。

子どもが好きなことを、最後に置く

ここが、決めるときの一番のこつです。

冒頭のご家庭の金魚が、まさにそうでした。

最後に楽しみがあると、そこまでの流れが進みます。

逆に、好きなことを最初に置くと、その後が動かなくなります。

うまくいったら、一つ飛ばして確かめる

効いているかどうかは、崩してみると分かります。

冒頭のご家庭も、それで確認しました。

順番を飛ばした日に泣いたことで、順番が効いていたことが分かったのです。

意図的に試す必要はありません。

急いでいて飛ばしてしまった日の反応を、覚えておくだけで十分です。

4つに共通する原則

原則1:変えるのは子どもではなく、子どもの外側です。

原則2:泣いている最中に言葉を足さない。届きません。

原則3:中身より、毎日同じであることを優先します。

原則4:楽しみは最後に置く。そこまでの流れが進みます。

順番と並んで効く「物の環境」

ここまで、順番や段取りといった目に見えない環境の話をしてきました。

一方で、棚の高さや物の置き場所といった目に見える環境も同じように効きます。

秩序の敏感期の子どもは、物の定位置にも強くこだわります。

いつもの場所にいつもの物がある。

それだけで、その子にとって世界は安定します。

逆に言えば、置き場所が日によって変わる家は、子どもにとって読み取りにくい家です。

おもちゃが大きな箱に全部放り込まれている状態は、その典型です。

どこに何があるか分からないので、自分で選べません。

一つ一つに定位置があると、子どもは自分で取り出して、自分で戻せるようになります。

そのために重要なのが、年齢と発達段階に合った教具や知育玩具を家庭に取り入れること。

かち旅では、モンテッソーリ教育の理念をもとに、子どもの「自分でできた」を引き出す木製知育玩具を取り揃えています。

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まとめ 4つのNG/OK

門の前で泣かれたとき

❌ NG:「先生が待ってるよ」と言い聞かせる

⭕ OK:毎朝同じ順番でやることを3つか4つ決める

順番を決めるとき

❌ NG:立派な習慣をたくさん組み込む

⭕ OK:3つか4つに絞って、毎日同じにする

好きなことの置き場所

❌ NG:最初にやらせて、機嫌よく始める

⭕ OK:最後に置いて、そこまでの流れを作る

ぐずりが始まったとき

❌ NG:その場で説得を続ける

⭕ OK:いったんその場を離れる

子どもはそのままで、周りを動かす

うまくいかない場面にぶつかると、まず子どもをどう変えればいいのかを考えてしまいます。

でも、今日ご紹介した方々がやったことは、全部その逆でした。

子どもはそのままで、周りの段取りを動かしています。

明日、何か一つだけ試すなら、順番を決めることをおすすめします。

朝でも夜でも、3つか4つでかまいません。

毎日同じ順番でやる。

それだけです。

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※本記事の事例について

本記事に登場するご家庭は、ご本人の特定を避けるため、複数のご家庭の事例を組み合わせて再構成したものです。特定の個人や家族を描写したものではありません。

引用元・参考

*1 マリア・モンテッソーリ『幼児の秘密』(The Secret of Childhood)p.50(原文:The presence of this sensitive period is perhaps more clearly shown by the obstacles that a child encounters, and it may well be that most childish tantrums are due to this sensibility. 訳は筆者)。archive.org 原著全文 https://archive.org/details/secretofchildhoo0000mont 

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