なぜなぜ期の声かけ5選|「なんで?」に答えられなくても大丈夫になるモンテッソーリ流
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「ねえ、なんで空は青いの」
「なんでセミは夏しか鳴かないの」
「なんで氷はとけるの」
朝ごはんの前から、お風呂の中まで。
子どもの「なんで?」が、一日中終わらない。
最初の何問かは、ちゃんと答えます。
でも夕方になる頃には、「うーん、なんでだろうね。後でね」となってしまう。
そして夜、寝顔を見ながら少しだけ胸が痛む。
今日、あの子の「なんで?」を、いくつ流してしまっただろう、と。
先にひとつ、数字を紹介します。
ある教育企業が2024年に小学生の親400名に行った調査では、「子どもの質問に答えられなかったことがある」と回答した親は81.3%でした *1。
答えに詰まるのは、あなただけではありません。
ほとんど全員です。
だからこの記事では、「うまく答える方法」ではなく、「答えられなくても大丈夫になる方法」をモンテッソーリ教育の視点からお伝えします。
「なんで?」は、困った癖ではありません
心理学では、子どもの質問には2つの波があると言われています *2。
2〜3歳頃の「これなあに?」(第1質問期)。
そして、3〜6歳頃の「なんで?どうして?」(第2質問期)。いわゆる「なぜなぜ期」です。
その量は、研究でも確認されています。
1〜5歳の子どもの家庭での会話を分析した研究によれば、子どもが情報を求めてする質問は、平均でなんと1時間に76回 *3。
なんと、76回です。
親が疲れるのは、当たり前なのですね。
では、モンテッソーリは「なんで?」と言う子どもをどう見ていたのでしょうか。
マリア・モンテッソーリは、著書『吸収する精神』の3〜6歳を扱った章でこう書いています *4。
「子どもの質問は、厄介ごとではなく『情報を求める心の表現』と見なせば、実に興味深いものになる」。
厄介ごとではなく、情報を求める心の表現。
質問が多いのは、心が育っている証拠なのです。
モンテッソーリはさらに、こうも言い切っています *4。
「遊び、想像、そして質問。これがこの年齢の3つの特徴である。誰もが知っていて、誰もが誤解していることだ」。
「なんで?」は、止めるべきものではなく、まっすぐ受け取るべきもの。
まず、ここがスタート地点です。
モンテッソーリが書き残した「パパの失敗談」
とはいえ、「ちゃんと答えなきゃ」と気負う必要はありません。
同じ章に、モンテッソーリ本人が書き残した、ある父親の失敗談が出てきます *4。
子どもが父親に聞きました。
「葉っぱはどうして緑なの?」
父親は、わが子の賢さに感激して、葉緑素と太陽光線について、長い長い説明をしました。
すると、まもなく子どもがつぶやいたそうです。
「ああ、どうしてパパに聞いちゃったんだろう。ぼくは葉っぱがどうして緑なのか知りたかっただけで、葉緑素と太陽の話が聞きたかったんじゃないのに」。
百年前から、パパは張り切りすぎていたのですね。
モンテッソーリの結論はシンプルでした。
この年齢の子どもは、長い説明にはついていけない。
だから、世界の長い説明ではなく、地球儀を与えよう、と。
子どもが求めているのは、講義ではありません。
自分の背丈に合った短い答え。
そして何より、質問を受け止めてもらえたという実感です。
なぜなぜ期の声かけ5選
「いい質問だね」
答える前に、まず質問そのものを受け止める一言です。
内容に答えられなくても、この一言だけは必ず言えます。
質問を歓迎された子は、「考えること」そのものが好きになっていきます。
難しい質問に詰まったときの時間稼ぎにもなります。
「〇〇ちゃんは、どうしてだと思う?」
すぐ答えず、問い返します。
モンテッソーリ園の家庭向け実践でも、「すぐ答えを教えない」「どうしてだと思う?と問い返す」は定番の型です *5。
子どもの答えがどんなに突飛でも、訂正はいりません。
「そう考えたんだ。面白いね」と受け取れば、子どもは自分の頭で仮説を立てる練習を始めます。
「一緒に調べてみようか」
図鑑、絵本、図書館。答えを知っていても、あえて一緒に調べる価値があります。
日本モンテッソーリ協会会長の佐々木信一郎さんは、子どもの興味関心は一人ひとり全部違うとした上で、本人がなかなか見つけられないなら「一緒に探します」と語っています *6。
答えを渡すのは一瞬で終わりますが、調べ方は一生ものです。
「何でだろうね」
わからないときは、ごまかさず、一緒に不思議がります。
保育士監修の解説でも、わからない質問には「何でだろうね」と一緒に不思議がることが勧められています *7。
親が「知らない」を隠さない姿は、子どもに「大人も学ぶ」という一番大切な背中を見せることでもあります。
「〜かもね」
「なんであの車は赤いの?」のような、正解のない質問もたくさん来ます。
そんなときは、推測で遊んでいいのです *8。
「あのおうちの人は、赤が好きなのかもね」「〇〇ちゃんはどう思う?」
質問が、親子の想像あそびに変わります。
うまくいかない日のための、運用メモ
76回全部つき合うのは無理です。
疲れた日は「あと1個だけね」「これはあとで必ず答えるね」と期限をつけて大丈夫です *7。
冷たく返してしまった日も、あとから「さっきはごめんね。さっきの『なんで』、もう一回聞かせて」でやり直せます *9。
私自身、うまく返せた日のほうが少なかった側の親です。
だからこそ、5つも覚えなくていい。
まず「いい質問だね」の一言だけで十分です。
「同じなんで?」が続くのは、答えが届いていないサイン
「答えても答えても、同じことを聞いてくるんです」
そんな声もよく聞きます。
実は、これには科学的な答えがあります。
米国の発達心理学の実験で、子どもの「なんで?」に説明を返した場合と、説明にならない返事をした場合を比べました。
すると、説明をもらえなかった子どもの21.4%が同じ質問をもう一度繰り返したのに対し、説明をもらえた場合はわずか1.2%でした *10。
同じ「なんで?」のループは、子どもの気まぐれではなく、「まだ答えが届いていない」というサインだったのです。
といっても、必要なのは葉緑素の講義ではありません。
あの逸話のとおり、子どもの背丈に合った一言を贈りましょう。
「葉っぱさんのごはんの色なんだって」で、ループは止まります。
「死」や「誕生」を聞かれたら
親が答えに困った質問の調査では、1位「人は亡くなるとどこに行くの?」、2位「人はどうやって生まれたの?」、3位「どうして空は青いの?」でした *11。
上位2つは、大人でも答えを持たない問いです。
専門家の見解は、こう一致しています。
死の質問には、答えの前に「そう思ったんだね」「気になるよね」と気持ちを受け止めることが先 *12。
誕生の質問には、コウノトリなどの作り話でごまかさず、年齢に合った言葉で事実を短く *13。
ごまかしの嘘は、いずれ知られて、親子の信頼を傷つけるからです *14。
受け止める。嘘をつかない。わからないことは、わからないと言う。
声かけ5選とまったく同じ原則で大丈夫です。
「なんで?」に応えられる環境をつくる
ここまで声かけについてお伝えしてきましたが、もうひとつ大切な視点があります。
それは、子どもの好奇心の受け皿を家庭に用意しておくことです。
モンテッソーリが「世界の長い説明ではなく、地球儀を与えよう」と言ったのは、まさにこのことでした。
言葉で説明しきれないことも、手で触れられるものがあれば、子どもは自分で確かめていけます。
図鑑を一冊置いておく。
手を動かして試せるものを、手の届く場所に置いておく。
それだけで、「なんで?」は親への質問から、子ども自身の探究に変わっていきます。
かち旅では、モンテッソーリ教育の理念をもとに、子どもの「自分でできた」を引き出す木製の知育玩具を取り揃えています。
答えを渡すかわりに、確かめる道具を渡す。
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この記事のまとめ
なぜなぜ期の声かけ5選。
ひとつ。「いい質問だね」。まず質問そのものを受け止める。
ふたつ。「どうしてだと思う?」。すぐ答えず、問い返す。
みっつ。「一緒に調べてみようか」。答えより、調べ方を渡す。
よっつ。「何でだろうね」。わからないときは、一緒に不思議がる。
いつつ。「〜かもね」。正解のない質問は、推測で遊ぶ。
モンテッソーリは、子どもに世界の全体を手渡すことを説いた本の中で、こう書いています *15。
「宇宙は堂々たる実在であり、あらゆる質問への答えである」。
子どもの「なんで?」は、その宇宙への扉が開く音です。
うちの双子にも、もちろんこの時期がありました。
もう20年以上前のことです。
当時の私は、仕事から帰った夕方の「なんで?」に、「後でね」ばかり返していた気がします。
でも、今ならわかります。
あの一つひとつが、世界と初めて出会った報告だったのだと。
お子さんの「なんで?」が飛んできたら、まず一言だけ。「いい質問だね」。
そこから始まる会話を、どうか楽しんでみてください。
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引用元
*1 公文教育研究会「子どもの疑問に関する調査」2024年(小1〜小4の親400名)
https://kyodonewsprwire.jp/release/202409136413
*2 ほいくis「なぜなに期(質問期)とは」
https://hoiku-is.jp/article/detail/573/
*3 Chouinard, M. M. (2007) Monographs of the SRCD, 72(1)(情報探索の質問は平均76回/時)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17394580/
*4 マリア・モンテッソーリ『The Absorbent Mind(吸収する精神)』1949年版・第18章 pp.273-274(訳は筆者)
https://archive.org/details/absorbentmind031961mbp
*5 モンテッソーリ久が原子どもの家「文化の敏感期」
https://note.com/monte_kugahara/n/n83999b85b02c
*6 日本モンテッソーリ協会(学会)会長 佐々木信一郎氏インタビュー(積水ハウス)
https://www.sekisuihouse.co.jp/kodate/ideas/lifestyle/kids/montessori/articles/story008/
*7 キッズライン【保育士監修】「なぜなぜ期の乗り越え方」
https://kidsline.me/magazine/seichou/1052
*8 サンリオイングリッシュマスター「なぜなぜ期の対応」
https://english.sanrio.co.jp/blog/archive/why-what/
*9 マイナビ保育士「ほいくらし」なぜなぜ期解説
https://hoiku.mynavi.jp/contents/hoikurashi/childminder/knowledge/30196/
*10 Frazier, B. N., Gelman, S. A. & Wellman, H. M. (2009) Child Development, 80(6)(再質問率 21.4% vs 1.2%)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2784636
*11 ARINA株式会社「おうち教材の森」調査2022年(保護者200人)
https://maidonanews.jp/article/14614608
*12 臨床心理士・吉田美智子氏監修「子どもに『死』を聞かれたら」(Domani・小学館)
https://domani.shogakukan.co.jp/593207
*13 産婦人科医・高橋幸子氏監修「赤ちゃんはどこからくるの?への伝え方」(命育)
https://meiiku.com/howtonavi/preschoolpregnancy/
*14 臨床心理士・高山恵子氏「性の質問へのごまかしは信頼を損なう」(STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ)
https://kodomo-manabi-labo.net/keikotakayama-interview-03
*15 マリア・モンテッソーリ『To Educate the Human Potential』1948・第1章 p.8(訳は筆者)
https://archive.org/details/toeducatehumanpo00mont