朝の支度で手を出してしまう親へ|「待ったほうが早かった」を実現する4つのこと
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朝、家を出るまでの10分で、3つの事件が起きる。
靴下が気に入らないと言って脱ぐ。
その間に牛乳をこぼす。
ようやく玄関まで来たと思ったら、今度は靴を左右反対に履こうとして、直そうとすると怒る。
時計は容赦なく進みます。
結局、親が全部やってしまう。
そのほうが早いからです。
先に結論をお伝えします。
待つのは、時間がかかることではありません。
最初の2週間だけ、余計に時間がかかります。
そのあとは、待ったほうが早くなります。
この記事では、なぜ「やってあげたほうが早い」が長い目で見ると遅くなるのかを整理した上で、待つために親ができる4つのことを紹介します。
「やってあげたほうが早い」の計算に入っていないもの
あるお母さんから、こんな言葉を聞いたことがあります。
気がつくと、子どもの癇癪への対応がうまくなっていた。
でもそれは、応えたほうが早いからそうしていただけだった。
この一言は、ずいぶん長く心に残りました。
応えたほうが早い。
手を出したほうが早い。
やってあげたほうが早い。
たしかに、その場は早く終わります。
3分かかるところが30秒で済む。
朝の10分しかない家庭にとって、これは切実な計算です。
ただ、この計算に入っていないものがあります。
その子が「自分でやった」という経験を1回分失っていることです。
1回なら、どうということはありません。
ただ、これが毎朝続くとどうなるか。
1年で300回を超えます。
300回分手を出された子は、自分でやる練習を300回し損ねています。
そして4歳になっても靴が履けないままであれば、親はまた手を出します。
手を出すから、できるようにならない。
できないから、手を出す。
朝の10分は、こうして毎年同じ10分であり続けます。
ある家庭が変えた、たった一つのこと
冒頭の朝を過ごしていたご家庭が、実際に試したことをご紹介します。
やったのは、朝の支度を30分早めることでも、完璧な声かけを覚えることでもありませんでした。
一つだけです。
靴だけは、絶対に手を出さない。
他のことは今までどおりでいい。
牛乳はこぼれるだろうし、靴下でもめる日もある。
ただ、玄関で靴を履くところだけは、何があっても自分でやらせる。
そう決めました。
最初の数日は、地獄だったそうです。
5分かかりました。
左右反対のまま出発した日もありました。
泣かれた日もありました。
何度も、手が出そうになるのを膝の上で握りしめて我慢したと言っていました。
変化が見えたのは、2週間ほど経ってからでした。
息子さんが、靴を履きながら、こう言ったそうです。
「こっちが、右」
誰も教えていませんでした。
左右反対で歩いた日の違和感を、本人が覚えていたのだと思います。
そしてもう一つ、驚いたことがありました。
玄関での3つ目の事件がなくなっていたのです。
怒られないから、怒らない。
急かされないから、急がない。
急がないから、かえって早い。
「待ったほうが、早かったんです」
そう笑っておられました。
待つために、親ができる4つのこと
全部ではなく、一つだけ選ぶ
先ほどのご家庭がやったのも、靴だけでした。
朝の支度をまるごと変えようとすると、必ず続きません。
こぼす。
脱ぐ。
ぐずる。
そのすべてに手を出さないでいるのは、はっきり言って無理です。
ですから、一つだけ選びます。
靴でも、コップでも、上着のファスナーでもいい。
そこだけは何があっても手を出さないと決めて、残りは今までどおりでかまいません。
一つが回り始めてから、次の一つを足します。
次の一歩が出るまで、3秒待つ
保育士として長く働き、社会福祉士の資格も持っている方から、こんな話を聞きました。
その方が先輩から学んだのは、たった一つのことだったそうです。
次の一歩が出るまで、待つ。
次の一言が出るまで、待つ。
あっけないほど単純ですが、実際にやってみるとこれがとても難しい。
子どもが靴を履こうとして、うまくいかずに手が止まっている。
その3秒か4秒が、大人にはとても長く感じられます。
助けたくなる。
かわいそうに思える。
それに、こちらには時間がない。
でもその3秒の間、子どもの中では何かが起きています。
どうすればうまくいくか、考えています。
大人が手を出した瞬間に、その思考は終わります。
東京都が保育の現場について紹介している資料の中にも、同じ趣旨のことが書かれています *1。
子どもが考えている途中で大人が手を出さずに待つことで、子どもは自分で考えて動けるようになっていく。
先回りせずに見守ることで、自分で課題を見つけて解決する経験が積み重なり、それが自信に変わっていく。
厚生労働省が出している保育の実践事例集も、「子どもを中心に」という考え方を軸に編まれています *2。
待つことは、何もしないことではありません。
手を出さないという、かなり能動的な行為です。
我慢ではなく、環境のほうを変える
とはいえ、意志の力だけで3秒耐えることを毎朝続けるのは難しいです。
ですから、手を出さずに済む状態を先に作ります。
靴は、子どもが自分で座って履ける場所に置く。
上着は、自分で取れる高さに掛ける。
コップは、両手で持てる重さと大きさのものにする。
服は前の晩に2択にしておく。
大人が手を出したくなる場面の多くは、子どもの能力ではなく、物の配置が原因です。
道具と配置が合っていれば、子どもは自分でやりきれます。
我慢を減らす一番確実な方法は、我慢しなくていい環境を作ることです。
止めるのではなく、エネルギーの行き先を用意する
年子の姉妹を育てているお母さんからは、別の角度の話を聞きました。
夕方の17時、二人同時にスイッチが入る。
そういう時間帯が毎日あるそうです。
その方が見つけたのは、こんな方法でした。
「手伝って」とお願いしてみる。
ただし、本気で戦力として頼むのではなく、遊び半分、手伝い半分くらいの気持ちで。
洗濯物を運んでもらう。
お皿を並べてもらう。
期待していなかったのに、思いがけずうまくいったそうです。
これも「待つ」の一種だと思っています。
子どもを止めようとするのではなく、子どもが持っているエネルギーの行き先を用意して、あとは任せて待つ。
制御しようとすると疲れます。
行き先を用意して待つほうが、大人にとっても楽です。
4つに共通する原則
原則1:変えるのは一つだけ。全部変えようとすると続きません。
原則2:手が止まった3秒は考える時間。奪わずに待ちます。
原則3:我慢ではなく配置で解く。手を出したくなる場面は、物の位置が原因です。
原則4:止めずに行き先を渡す。制御するより、任せるほうが大人も楽です。
「私がいないかのように」
モンテッソーリ自身は、このことをより踏み込んだ言葉で述べています。
『吸収する精神』の第27章、教師の準備について書かれた章に、こんな一節があります *3。
「教師にとっての最大の成功のしるしとは何か。それは、「子どもたちは今、私がいないかのように活動している」と言えることである」
初めて読んだとき、少し怖くなりました。
教える仕事をしている人にとって、自分がいてもいなくても同じというのは普通なら失敗です。
それをモンテッソーリは成功と呼んでいる。
でも、考えてみれば当たり前のことでもあります。
子どもが自分で始め、自分で続け、自分で終えられるようになったなら、大人はもう必要ありません。
そこまで連れていくのが大人の仕事なら、最後に自分が要らなくなることこそがゴールです。
親も同じだと思います。
私たちは、いずれ要らなくなるために手を貸しています。
待てる朝をつくる「環境づくり」
4つの中で、家に帰ってすぐ手をつけられるのは「環境」です。
声かけも我慢も、その日の親の余力に左右されます。
でも配置は、一度変えれば毎朝効きます。
そして同じ考え方は、朝の支度以外にも使えます。
子どもが自分で選んで、自分のペースで最後までやりきれるものが家にあると、「できた」を積み重ねる機会がそのぶん増えます。
大人が教えなくても、間違いに自分で気づける作りになっているものが理想です。
はまらなければ、子どもは自分でやり直します。
そこに大人の採点は要りません。
そのために重要なのが、年齢と発達段階に合った教具や知育玩具を家庭に取り入れること。
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まとめ 4つのNG/OK
朝の支度を変えたいとき
❌ NG:こぼすのも脱ぐのもぐずるのも、まとめて直そうとする
⭕ OK:靴だけ、コップだけ、と一つ選んでそこだけ手を出さない
子どもの手が止まったとき
❌ NG:「貸して、やってあげる」
⭕ OK:3秒待って、本人が動くのを見る
手を出したくなるとき
❌ NG:意志の力で我慢する
⭕ OK:自分で座って履ける場所に靴を置く
騒がしくて手がつけられないとき
❌ NG:「やめなさい」で止める
⭕ OK:「手伝って」で行き先を渡す
どこを一つ選びますか
待つのは、時間がかかることではありません。
最初の2週間だけ、余計に時間がかかります。
朝の10分を毎年同じ10分にしないために、今年のどこかで2週間だけ、余計に時間をかける。
それだけの話です。
そして、すべてを一度に変える必要はありません。
先ほどのご家庭がやったのも、靴だけでした。
あなたのおうちでは、どこを一つ選びますか。
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※本記事の事例について
本記事に登場するご家庭は、ご本人の特定を避けるため、複数のご家庭の事例を組み合わせて再構成したものです。特定の個人や家族を描写したものではありません。
引用元・参考
*1 東京都「魅力ある保育」子供たちを見守り、受け止める保育 https://www.hoikunomiryoku.metro.tokyo.lg.jp/senmonsei/article17.html
*2 厚生労働省「子どもを中心に保育の実践を考える 保育所保育指針に基づく保育の質向上に向けた実践事例集」(2019年6月) https://www.mhlw.go.jp/content/000521634.pdf
*3 マリア・モンテッソーリ『吸収する精神』第27章「教師の準備」(原文:What is the greatest sign of success for a teacher thus transformed? It is to be able to say,「The children are now working as if I did not exist.」 Claremont訳・1969年版 p.283)