冬の着替えが進まない理由|7つの工程を減らす声かけ5選
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冬の着替えには、7つの工程があります。
夏は3つでした。
半袖、ズボン、靴下。
それが11月になると、肌着、トレーナー、ズボン、靴下、上着、帽子、手袋の7つになります。
朝の玄関で、同じ言葉を3回言っている。
「早く着替えて!」
そんな朝を過ごしている方は、決して珍しくありません。
先に結論をお伝えします。
子どもが急にできなくなったわけではありません。
やることが倍以上に増えただけです。
ですから、減らせるのは工程のほうで、急かす言葉ではありません。
この記事では、なぜ冬の服が難しいのかを整理し、着替えの発達について90年分の調査で分かっていることをお伝えした上で、明日から試せる5つを紹介します。
冬の服は、どれも着るのが大変です
同じ速さで手を動かしていても、工程が3つから7つになれば、かかる時間は倍を超えます。
靴下はかかとの位置を確かめる手間があり、上着は袖に腕を通す向きがあり、手袋は指が5本に分かれています。
さらに、生地が厚くなります。
夏のTシャツは首が広くて腕がすぐ出てきますが、トレーナーは生地が厚く、袖口がゴムで締まっています。
腕が途中で止まったまま、袖の中で手がもぞもぞしている。
親としては、見ていて何だかむずむずする、あの時間です。
秋の初めまでは自分で着ていた子が、11月になると「やって」と言い出すことがあります。
やる気が落ちたわけではなく、服の着方が難しくなったのだと思います。
だから、やることを増やした側が、減らせる場所を探すのが先だと考えています。
「脱ぐ」は「着る」より先に来ます
ここで、着替えの発達について分かっていることを一つ述べます。
子どもの基本的生活習慣については、日本で1936年から調査が続けられています。
山下俊郎の調査に始まり、1963年に西本脩、1987年に西本望、2003年に谷田貝と高橋が、それぞれ同じ項目を調べ直しています *1。
70年近く離れた4つの調査が、1点で一致しています。
「ひとりで脱ごうとする」が、「ひとりで着ようとする」より先に来るのです *1。
1936年の調査では、脱ぐのが2歳0か月で、着るのが3歳6か月でした。
2003年の調査では、脱ぐのが1歳6か月で、着るのが2歳0か月。
年齢そのものは調査によって動いていますが、順番はどれも変わりません。
家庭での着替えを21日間記録した研究でも、同じことが確認されています *2。
着るより脱ぐほうが先に自分でできるようになる、という結果です。
言われてみれば当たり前の話です。
脱ぐのは引っ張れば終わりますが、着るのは向きを合わせて穴を見つけないと始まりません。
ついでに、もう一つ。
前のボタンを留められるようになるのは、調査によって3歳6か月ごろから4歳0か月ごろとされています。
靴紐を前で結ぶのは、2003年の調査では8歳です *1。
冬の朝にボタンのついた服を出して「自分で留めてみて」と言っていたとしたら、それはまだ時期が早いかもしれません。
冬の着替えが進む声かけ5選
前の晩に、着る順で重ねて置く
NG:朝に「自分で着替えて」と言う
OK:前の晩に、下から着る順で重ねておく
一番上に肌着、その下にトレーナー、次にズボン、最後に靴下。
上から順に取れば、それが着る順になります。
朝の子どもは、何を先に着るかを決める時点でつまずきます。
引き出しを開けて中を見ると、そこには選択肢が20着あります。
前の晩に4枚並べておけば、朝の仕事は「上から取る」だけになります。
モンテッソーリ教育では、物の置き方によって動作が決まると考えます。
棚の高さを変える。
道具の向きをそろえる。
それと同じことを、寝る前の3分でやっておく話です。
置き場所は床でも、かごでも、椅子の上でもかまいません。
子どもが自分で手を伸ばせる高さにあることだけが条件です。
「脱ぐ」ことから任せる
NG:朝の着替えを全部自分でやらせる
OK:帰ってきてからの上着と靴下を、本人に脱がせる
発達の順番は「脱ぐ」ことが先なので、任せる順番もそこからです。
朝は時間がありません。
急いでいる場面で自立を求めると、親は待てず、子どもは怒られます。
夕方の玄関なら、5分くらいは余裕があります。
上着を脱いでフックにかける。
靴下を脱いで洗濯かごに入れる。
この2つだけなら、2歳でもできる日があります。
脱げるようになった服は、着る時にも扱いやすくなります。
袖から腕を抜いた子は、袖に腕を通す道筋を自分の体で知っているからです。
全部やらせない。1工程だけ渡す
NG:「今日は全部自分でやってみようか」
OK:「靴下だけ、はいてみる?」
冬の着替えには、他の季節にない制約があります。
服を着ていない時間が長くなると、体が冷えます。
先ほどの観察研究でも、ここは注意点として書かれています *2。
着脱に時間がかかると衣服を身に付けていない時間が長くなり、体が冷えるなど体調に影響する恐れがあるため、ひとりでできないときは無理をさせずに手伝うこと。
自立を急いで風邪をひかせたら、本末転倒です。
そのため冬は、7つの工程のうち一つだけを本人に任せます。
今日は靴下、明日も靴下。
一つが速くなったら、二つ目に挑戦してみましょう。
靴下を履き終えた子が、顔を上げて次を待っている。
その数十秒のうちに、こちらは上着を広げて準備しておく。
4つの手がそれぞれ異なる工程を同時に動かしている形になります。
残りの6つは、こちらが手を出してかまいません。
全部任せるか全部やるかの2択ではありません。
上着は床に広げて、フードから頭を入れる
NG:後ろから上着を広げて持って、袖に腕を入れさせる
OK:上着を床に裏返しに広げて、フード側に子どもを立たせる
上着を自分で着るのが一番難しいのは、袖の位置が後方にあって見えにくいからです。
そこで、やり方を変えます。
上着を床に裏返して広げ、フードか襟が子どもの足元に来るように置きます。
子どもは上着に向かって立ち、しゃがんで両方の袖に腕を入れます。
そのまま腕を上に挙げて、頭の上で後ろに回す。
上着が背中に落ちてきて、着終わります。
初めて見ると、ひっくり返るような動きに見えます。
ただ、これは袖が目の前にあるので、子どもが自分の目で確かめながら進められます。
一度覚えると、親が上着を広げて持って待つ必要がなくなります。
玄関で親が上着係をしている時間が、そのまま消えます。
首まわりのひもは、買った日に抜いておく
NG:ひもやフードのついた上着を、そのまま着せる
OK:首まわりの垂れ下がったひもは抜くか縫い付ける
これは着替えの話ではなく、安全の話です。
子ども服のひもについて、2015年に日本産業規格で次のように規定されています *3。
13歳未満が着る子ども服を対象に、頭や首まわりから垂れ下がるひもは付けない。
ただし、この規格に強制力はありません。
消費者庁は、規格に適合していない製品が今でも販売される可能性があると述べています *3。
実際に、ひもが遊具に引っかかる事故が起きています。
手持ちの服は点検して、危険なひもは抜くか縫い付けるように勧められています *3。
冬は該当する服が増えます。
フード付きのパーカー、ひもで絞るコート、首に巻くマフラー。
買った日のうちにひもを抜いておくと、着替えの工程も一つ減ります。
結び目をどうするかで迷う時間がなくなるからです。
5つに共通する原則
原則1:減らすのは工程で、急かす言葉ではありません。
原則2:任せる順番は「脱ぐ」から。発達の順番がそうなっています。
原則3:冬は1工程だけ渡す。体が冷える時間を作らないためです。
原則4:見えない位置の作業は、見える位置に変える。上着は床に広げます。
原則5:前の晩に整えておく。朝に増やせる余裕はありません。
指先の力は、服以外の場面で育ちます
ここまで、工程を減らす話をしてきました。
一方で、指先そのものの力をどう育てるかという話も残ります。
モンテッソーリ教育には「着衣枠」という教具があります。
ボタン、スナップ、ひも結びなどを、枠に張った布だけで練習できるようにしたものです。
なぜ服から切り離すのかというと、朝の着替えは急いでいて、練習には向かないからです。
寒い玄関で、登園時刻に追われながら、ボタンを初めて練習する。
これは、子どもにとっても親にとっても、一番条件の悪い場面です。
同じことが、家庭の遊びでもできます。
つまむ、はめる、通す、回す。
こうした動きを手が覚えていれば、ボタンもファスナーも、時期が来たときにすっと通ります。
大切なのは、子どもが自分のペースで、何度でもくり返せることです。
そのために重要なのが、年齢と発達段階に合った教具や知育玩具を家庭に取り入れること。
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まとめ 5つのNG/OK
朝の着替えが進まないとき
❌ NG:朝に「自分で着替えて」と言う
⭕ OK:前の晩に、下から着る順で重ねておく
自分でやらせたいとき
❌ NG:朝の着替えを全部やらせる
⭕ OK:帰宅後の上着と靴下を、本人に脱がせる
任せる量を決めるとき
❌ NG:「今日は全部自分でやってみようか」
⭕ OK:「靴下だけ、はいてみる?」
上着を着せるとき
❌ NG:後ろから広げて持って、袖に腕を入れさせる
⭕ OK:床に裏返しに広げて、フード側に立たせる
ひも付きの服を買ったとき
❌ NG:そのまま着せる
⭕ OK:首まわりの垂れ下がったひもは、その日に抜く
明日ためすのは、靴下1足ぶんで
子どもができなくなったのではなく、工程が増えただけです。
前の晩に服を順番に重ねておけば一つ減ります。
ひもを抜いておけば一つ減ります。
渡す工程を一つに絞れば、残りはこちらの仕事になります。
そして、任せる順番は「脱ぐ」からです。
90年前の調査から今の調査まで、そこは変わっていません。
朝の玄関で3回「早く着て」と言っている家は、今朝も全国にいくつもあります。
明日ためすのは、靴下1足ぶんでかまいません。
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引用元・参考
*1 竹下真由実「幼児の着脱衣行動に関する考察 ― 家庭での観察記録から ―」『鳥取短期大学研究紀要』第68号(2013年)表1「基本的生活習慣(着脱衣の行動)の自立標準について」。山下俊郎(1936年)、西本脩(1963年)、西本望(1987年)、谷田貝と高橋(2003年)の4調査を比較した表。「ひとりで脱ごうとする」は山下2歳0か月/西本脩2歳0か月/西本望1歳6か月/谷田貝と高橋1歳6か月。「ひとりで着ようとする」は山下3歳6か月/西本脩2歳6か月/西本望2歳0か月/谷田貝と高橋2歳0か月。「前のボタンをかける」は山下4歳0か月/西本脩4歳0か月/西本望3歳0か月から3歳6か月。「紐を前で結ぶ」は谷田貝と高橋で8歳
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390853649583173760
*2 同論文の要旨および調査の留意点(1歳7か月の子どもの入浴時の着脱を21日分記録。着衣より脱衣の行動自立が早いこと/着脱衣に時間がかかると衣服を身に付けない時間が長くなり体が冷えるなど体調に影響を及ぼす恐れがあるため、ひとりではできないときは無理をさせずに手伝うこと)
*3 消費者庁「みんなの消費安全ナビ from 消費者庁」Vol.533「子ども服のサイズ、ひもやフードに注意。安全性を第一に選びましょう」(子ども服のひもの安全基準のJIS規格は2015年12月制定/頭や首回りから垂れ下がっているひもは付けられない/この規格は販売を規制するものではないので規格に合っていない製品が現在でも販売される可能性がある/手持ちの子ども服を点検して危険なひもは抜いたり縫い付けたりして加工する)。消費者庁のサイトからは削除済みのため保存版にリンク
https://web.archive.org/web/20230929181154/https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20201203/
消費者庁 同 Vol.600「子ども服、安全性を意識して選んでいますか」(JIS L 4129 は13歳未満が着用する子ども服のひもの安全規格)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20220818/